子どもじゃなくて親向け?兄弟姉妹の絵本

「きょうだい」というと、兄弟に姉妹、兄妹に姉弟、3人きょうだいや4人きょうだい。はたまた双子や三つ子の場合も…。

ひとりっこも含めて、子どもたちにはいろいろなきょうだい構成があり、10組のきょうだいがいれば、10通りのきょうだい関係が存在していると思います。

みみずく
みみずく

我が家の子どもたちのきょうだい構成は、3歳差の兄弟です

どんなきょうだい構成になるかは家庭の事情によるものが大きいですし、性別については親にも当人たちにも選べるものではありません。

きょうだい関係がどうなるかもまた、本人たちの性格によるものが大きく、親が「こうなってほしい」と願ったからと言って、必ずしもそうなるとは限らないと思っています。

……という前提のうえで、本日は「きょうだいの絵本」をご紹介します。

きょうだい絵本を「学び」には使えない理由

これまであらゆる知育・教育を絵本に頼ってきた我が家ですが、たとえば「月は宇宙にあるんだよ」と同じように、「きょうだいってこういうものなんだよ」と絵本を通して学ぶのは、注意が必要だと感じています。

みみずく
みみずく

本人たちからすれば、兄になりたくて兄になったわけじゃないですし、弟になりたくて弟として生まれたわけじゃないのに、「こういうふうになりなさい」とは言えない…。

もちろん、ある程度成長した後で、きょうだい関係もひとつの人間関係であり、どういうコミュニケーションを取るといいのかと考えられるような年頃になったら、悩み考えるきっかけとして本を使うのはありだと思います。

親から見た理想のきょうだい関係を作るために、「あなたは兄だよ、兄はこういう存在だよ」「あなたは弟だよ、弟はこういう存在だよ」という、ある種の「学び」を、絵本を通して与えたくないなと思いました。

たとえばこちらの「つくしちゃんとおねえちゃん」は、2022年、小学校低学年の課題図書作品です。

みみずく
みみずく

「あたしのおねえちゃんは、頭が良くて、いばりんぼう」そんな妹の視点から、笑ったり喧嘩したり、揺れ動く姉妹の日常が描かれた児童書です。

「姉妹の複雑な心境を読み解く」という意味では、小学生にとって学びのある1冊です。

ですが、「あなたはおにいちゃん(おねえちゃん)になるのだから」と、暗に「上の子としての役割を押し付ける」ように感じられる絵本は、特に幼少の子どもに読み聞かせるには注意が必要だと感じています。

こちらの「ちょっとだけ」は、特に母親たちから「泣きました」と大絶賛のレビューが多くついている1冊です。

みみずく
みみずく

おねえちゃんになったなっちゃんは、あかちゃんに手いっぱいのおかあさんを頼れず、ひとりでパジャマを着ようとしてうまくできなかったり、買い物の時におかあさんと手を繋げなかったり…。成長していくなっちゃんの姿を描いた物語。

子どもの健気な姿を見て、私も自身の反省の気持ちも込めて、泣きたい気持ちになる絵本です。

「親として考えさせられる1冊」ではありますが、果たしてこれは、これから兄(姉)になる子ども、またはもう兄(姉)になった子どもに読み聞かせるべき絵本なのかというと、私自身は迷います。

もう1冊、ご紹介するのは「おにいちゃんといもうと」です。

みみずく
みみずく

おにいちゃんにからかわれたり、いたずらされて、妹は泣かされてばかり。でもだんだん妹はめげなくなってきて、少しずつ兄妹に変化が起こっていく…。

「妹を泣かせてばかりいるお兄ちゃん」から始まる物語です。

絵を描いているはたこうしろうさんは、私も大好な絵本作家さんですが、「実際に下の子をいじめてしまう上の子への対処法」としてこの絵本を使うのは、やはりストップをかけたくなります。

特に幼少期ならば、上の子が下の子に手を出すのは赤ちゃん返りの可能性もありますし、逆にいじわるをされている下の子に「あなたと同じね」なんて読み聞かせるのも、違和感があります。

知育・教育の面で、大きな学びを与えてくれる絵本。

けれどやはり、きょうだい絵本に関しては、「どれを読み聞かせるか」「どのタイミングで読むのか」を注意すべきだと思っています。

きょうだい絵本は誰のためのもの?

たくさんの絵本が発行されているきょうだい絵本。その中には、子どもたちよりも「親のための絵本」も多く含まれていると私は思っています。

ご紹介した「ちょっとだけ」や「おにいちゃんといもうと」も、子どもへの学習のための絵本ではなく「親のための絵本」と考えれば、「泣きました」と絶賛されているレビューの意味もわかりますし、手元に置いておきたいと考える親御さんもいらっしゃるのではないかと思います。

・兄弟姉妹を得た子どもたちが、どんな気持ちでいるのかを、親としてあらためて考える機会として。

・自分の子どもたちに、こんなふうに育ってほしいという理想のイメージのため、あくまで親のための絵本として。

・「自分の子どもたちと似ているな」という共感を得るための絵本として。

・子どもたちが大きくなった後で、「あなたたちにこのきょうだいが似ていたのよ」なんて、思い出話をするためのものとして。

そういう観点から考えると、「きょうだい絵本」はとても素敵なものだと思っています。

みみずく
みみずく

私も「自分たちの子どもに似ているな」というきょうだいの絵本は、手元に置いてあります。今はただ物語として楽しんでいますが、いつか子どもが大きくなって、「このきょうだい、あなたたちにそっくりだったのよ」って話をする時を楽しみにしています。

もちろん、「ケーキがたくさん出てきておいしそうな絵本」や「自然の知識が身につく絵本」、「ワクワクの冒険を味わえる絵本」や「数の工夫を考えさせる絵本」など、きょうだい関係の部分だけでなくストーリーも楽しい絵本もたくさんあります。

以上を踏まえましたうえで、きょうだいに関する絵本をいくつかご紹介したいと思います。

おすすめきょうだいの絵本

おとうとがおおきくなったら

まだ赤ちゃんの弟は、もっと大きくならないと一緒に遊べないらしい。「ぼく」は弟が大きくなった時のことを考えます。自転車に乗ってジャングルに行って、海辺でお城を建てて、ボートに乗って海に出て……。

夢と希望に満ち溢れた想像の未来と、生き生きとした兄弟の姿に、胸が高鳴る1冊。

みみずく
みみずく

とにかく空想の世界の絵がとても美しい! 冒険に旅立つわくわく感と、楽しそうな兄弟の姿に心が躍ります。

しろくまきょうだいのケーキやさん

育児雑誌「kodomoe」の付録絵本として人気になったしろくまきょうだいシリーズ。

しっかりもののお兄さん・ポールと、愛嬌いっぱいの弟・ノエルは、手作りのケーキ屋さんをオープン。ポールのケーキが食べたいノエルは列に並ぶが、自分の番の前でケーキが売り切れてしまい…。

失敗して泣くノエルに、「しかたないなぁ」と解決策を提案してくれるお兄さんの機転とやさしさがステキな兄弟絵本です。

みみずく
みみずく

ポールが作るケーキはどれも美味しそうで、ケーキ絵本としてもオススメ!

また、シリーズ絵本が何冊も発行されています。

みちくさしようよ!

小学校1年生の弟と小学校6年生のお兄ちゃんが、ふたりで学校帰りにみちくさをするストーリー。

生き物や自然に詳しいお兄ちゃん、弟にいろいろな「自然の楽しみ方」を教えてくれます。知らない道を通った先はワクワクの大冒険!

「まってよー」とお兄ちゃんを追いかける弟と、なんだかんだで優しく弟に教えてくれるお兄ちゃんの兄弟関係が絶妙な1冊です。

みみずく
みみずく

お兄ちゃんが教えてくれる生き物や自然の知識は、科学絵本のように情報盛りだくさんです!

こちらの兄弟のシリーズ絵本も何冊も発行されています。

ふゆのむしとり?! [ はたこうしろう ]
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ちょろりんととっけー

トカゲのちょろりんは、夏休みにひとりでおじさんの家に行くことに。ところが知らぬ間に弟のとっけーがついてきてしまいます。仕方なくちょろりんはとっけーの面倒を見ながら、おじさんの家を目指しますが、途中でとっけーと離れてしまい…。

「上の子が下の子の面倒を見る→下の子が迷子になる→上の子が慌てて下の子を探す」というよくある展開ではありますが、それ以上にワクワクの冒険感の強い1冊です。

特に絵が素晴らしく、トカゲのサイズから見上げた草や森の大きさのリアル感に驚きます。

みみずく
みみずく

余談ですが「トッケー」というと「トッケーヤモリ」を思いだします(トカゲじゃなくてヤモリですが…)

弟のトッケーは登場しませんが、ちょろりんシリーズの1作目もオススメ!

わたしのおにいちゃん!

終業式、荷物がいっぱいのユキは校門でおにいちゃんを待っていました。理由は「おにいちゃんに荷物を持ってもらおうと思っていた」から。

「荷物が重い」「喉が渇いた」そんな妹の訴えを聞いてあげる優しいおにいちゃん。妹が甘えすぎな面もありますが、妹を大事に思っている兄と、そんな兄が大好きで自慢に思っている妹という、「兄妹愛」を強く感じる絵本です。

みみずく
みみずく

このお兄ちゃんが、できたお兄ちゃんすぎてびっくりします…

あかちゃんがきた!

あかちゃんが家にやってきた時の様子を、子どもの視点から描いた絵本。

あかちゃんを抱いたおかあさんが帰ってきて玄関を飛び出したり、「あなたのいもうとよ」って言われてドキドキしながら頭を撫でたり…。自分がいきなりお兄ちゃんになった時の戸惑いやうれしさ、不思議な感覚を感じられる1冊です。

みみずく
みみずく

大人にとっては「病院に行って出産して…」という一連の流れも、上の子にはこんなふうに感じられるのだとあらためて考えるきっかけになります。

わたしたちのケーキのわけかた

なんでも5つに分けないといけない5人きょうだいの日常を描いた作品。

いちごが6つのったケーキをどうやって5つに分ける?

お菓子にりんご、せんぷうきにキックボード。きょうだいそれぞれが知恵をしぼり、個数や体積、角度や時間から工夫して、まるでサバイバルのような日々を過ごしています。そんな時、怪我をして「1人」になる日がやってきて…?

時にクスリと笑えて、幸せな読後感の残る1冊です。

みみずく
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実際に5人きょうだいの次女だったという作者の、子ども時代の体験から生まれた絵本です。

あさえとちいさいいもうと

ロングセラー絵本「はじめてのおつかい」の筒井頼子さん&林明子さんのコンビによる、1979年発表の絵本。

おかあさんの留守中に、妹のあやちゃんと家の前で遊んでいたあさえ。あやちゃんを喜ばせようと、夢中で道に絵を描いていたあさえは、ふと顔を上げるとあやちゃんがいないことに気付き…。あやちゃんを探して走るあさえの緊迫感と、ラストであやちゃんを見つけた時の安堵感が伝わる1冊です。

みみずく
みみずく

子どもたちを置いて母親が出かけてしまうあたり、絵本が描かれた時代を感じますが、あさえの気持ちになって読むと本当に胸がいっぱいになる作品です。

ねえさんといもうと

「下の子が迷子になる→上の子が半泣きになりながら必死に探す→探し出された下の子は事態に気付かずきょとんとしている」

この展開のきょうだい絵本は多いですが、「下の子が事態を把握しないまま終わることにもやもやする」という方にオススメの1冊。

小さな妹の面倒をいつも見ているねえさん。なんだって教えてくれる優しいねえさん。でもある時、ちょっとした好奇心で妹はねえさんの目から隠れてしまう。必死に妹を探すねえさんの声を聞きながら隠れ続ける妹。すると、ねえさんに異変が起き…。

「上の子の焦燥を下の子が目撃する展開」「世話を焼かれ続けることに違和感を覚える下の子の複雑な心境」など、他のきょうだい絵本ではあまり見ない絵本です。

みみずく
みみずく

美しい姉妹のイラストと、心に残る文章がステキな絵本です!

バイブルになるきょうだい絵本との出会い

いかがでしたか?

兄弟絵本、姉妹絵本、きょうだい構成の違いもそうですが、きょうだい絵本といってもさまざまなきょうだい関係の絵本が存在します。

親御さんにとって、育児の思い出とともに、ずっとたからものにしておきたい1冊と出会えることを願っています。

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